野口整体を愉しむ(再録66)整体操法の基礎を学ぶⅡ(58)上肢操法、下肢操法(その1)

整体操法の基礎を学ぶⅡ(58)上肢操法、下肢操法(その1)

I先生「ムチウチ症で、頸椎六番、七番をこわすと、手の指が痺れるという人がいる。しかし、手が痺れるのは必ずしも頸がこわれたことが原因でないこともある。肘が狂った場合にもそうなるし、手首が狂っただけでもそうなる。あるいは心配事がある時や、エネルギーが下から上に昇華していくような傾向があるときも指が過敏になる。最近はそういうのもみなムチウチ症で片付けられてしまっている。
頸の調節をしても治らなかったり、酷くなったりしたときに、異常を感じている指から探っていって、その途中にある硬結をじっと押さえていると良くなってくる。
そこで今日は、指の系統の硬結を処理する練習からやっていきます。」

小指側は腕の裏の方から出ています。出発点は脇の下で、肘の上肢第五調律点の処を通って小指に響く処です。
中指の系統は、腕の真中から出て、骨の上を肘の処まで押さえていきます。肘から先は中指に響きます。そこからずっと中指に直接入ってきます。関節が狂っていたり、捻挫したような時にも、無理して治さないで、上から順にやっていくと自然に治ってしまう。呼吸器の病気や神経衰弱などは指が冷たくなったり強張ったりしていますから、逆に指の方から押さえて追いかけていく。神経衰弱で指が震えるというのも、この系統の異常である。

腕の操法で特に大事なのは、脊椎の一側が硬直している場合に、それを弛めるに都合がいいということである。頭が疲れているような時には特に一側が硬直してくるが、一側を弛めるために腕の操法を先にやると、早く弛む。指を使いすぎて神経衰弱や脳溢血を起こす人がある。整体指導者も自分の親指と小指の系統の硬結や硬直を整理しておく必要がある。

体の臓器の変動が直接影響するという点では、足の方がはるかに多い。ほとんどの臓器が足の異常と関係がある。それを調整する方法としては、腕の方が重要で、手と足の操法というのは、考えている以上に臓器の変動と関係がある。

足は右と左では同じでない。足の中で重要なのは、泌尿器系としての左の内股と、盲腸炎の場合の右の内股です。右の内股は盲腸炎だけでなく、小便のつまった時に急速に効くというだけでなく、体液の流れにも関係している。
内股を押さえて、ここが著しく張っている人は、何か異常を起こす前である。
体液を流すという意味で、ときどきここを操法する。体がだるいとか、何となく力が入らないようなのは、ほとんどここの流れが鈍くなっている。上から三か所、気持ちのいいように押さえる。上の二か所で「快痛」がある人は、停滞がある。それを流すには、膝に近い処を押さえる。停滞があれば「快痛」、なければ痛いだけである。

そこよりもっと体液の流れに直接関係するのは後ろの坐骨系統。そこを摘まんでもいいし、直接押さえてもいい。これをやった時は膝下の内側も必ずやっておく。坐骨に閊えのある人は、そこも閊えている為である。生殖器や消化器が閊えている人は、皆ここが閊えている。ここに力が無くなっている人は、ここに指がずぶずぶと入って柔らかい。

それから、足首も大事です。外踝の位置が下がっていたり、後ろに行ったりしているのは異常です。足首が狂っている場合に、外踝のまわりを上げておいてから足首の操法をすると、いままで治らなかったのが簡単に治る。足首は必ず外踝を上に、真中に、真中にと押していく。ここはまた、脳溢血で頭の麻痺がある場合や小児麻痺の場合、麻痺している側の外踝が下がっているので、これを持ち上げていくと治ってくる。

一度、二人で組んで、相手の外踝が下がっているか確認してください。左右どちらかの
踝が下がっていたら、脳溢血の可能性があります。両方同じように押さえると、下がりたてなら痛い。下がってから時間が経っている場合は、冷たくなっている。冷たいのは危ない。痛くない方が下がっていたら警戒が必要。下がっている方が痛ければ心配ない。下がっている人や、仙骨の冷えるという人は、アキレス腱を押さえると良くなる。それは頭の過剰な疲労の調整方法です。逆にアキレス腱部が弛緩して、足が重く感じる時は、頭の皮をと寄せるように操法すると治ってくる。

食べたものがもたれて、何か気分が悪いというようなことの大部分は、体液の停滞が関係しているので、内股を操法すると収まってくる。頭痛、肩こり、足が重い、だるい、何となく力が入らないという症状や、処理の判らない様な病気に対して、足の処を処理すると収まってくるし、実際に関連のある臓器の異常も治ってくる。

一晩眠れないでだるい、なんていうのは一側が硬直しているだけで、腕を押さえれば目が覚めてくる。それから、無闇に居眠りするようになったら、体に異常がなくても、頭を警戒すべきです。

手や足の操法というのは、まだ体に異常が起こる前の異常、いままで病気と認めていない処の異常、あるいはだるい、眠い、寒い、疲れる、重い、そういったものを処理するには非常に重要な処です。

せっかくスポーツをやって、いろいろな体の使い方をしながら、それの体の休め方を知らない為に、スポーツが健康法にならずに、勝ち負けを争って偏り運動をする結果、体を壊してしまうという人が多い。スポーツが体育となる為には、それに応じた体の休め方がなくてはいけない。運動をした翌日、体のあちこちが痛いというのではしょうがない。
背骨の曲がった処を上げるように押さえると痛みがとまる。そうして次にやると、前より伸び縮みが良くなり痛まなくなる。だからスポーツをやって方々痛む時に、それを取る体操をするとか、操法をすると、同じ処が痛まなくなる。そうやってスポーツをすれば、スポーツも体育になるが、使いっぱなしで後始末がないと壊してしまう。
そういうような場合でも、整体操法の手足の操法や、一側の操法はかなり重要な意味を持っている。

皆さんのこれまでの知識を利用して、病気以前のいろいろな異常感がどこと関係しているかを注意して調べていくと、いろんなことがはっきりしてくると思います。この中等の講習では、初等のときのように、教えられたことをそのまま覚えてやるというのではなく、それを応用して相手の感受性に合わせて行くにはどうするかを自分で見つけていく訓練もしていく必要があるということを心がけてください。
これで、今日の講義は終わります。