野口整体を愉しむ(再録112)気の方向を変える

気の方向を変える

野口晴哉氏が1968年4月におこなった「整体操法高等講座」の口述記録からの引用です。

死ぬか生きるかという場合に私のやることは、気の向きを変えるということなんです。あとはその人に体力があれば生きるし、なければ生きない・・・。
普段の操法においても、気の方向を変えるということを唯一無二の操法としております。指で押さえるのではない。指で押さえるなんていうのは体操の延長のようなものであります。
私の整体指導のコツ、一番の終点は、相手の気を変えるということであります。その気を変えるための方法は、相手の気に言うのです。言葉も何も使わないんです、指を使うが押すわけでもないんです。
人間は大体そういうように人の気を受けると気が動いていくように、また人の気を感じて気が変わっていくように出来ているんです。
もういかん、という一歩手前まで行ったときに、一番気を変えるという技術が使えるのであります。そうしてその気が変わると、物も心も変わってくる。
相手の気の向いている処があるんです。それが感じられなければ駄目なんですけれども。・・・
気を交換する。他人の背骨で呼吸する。
気の交換という相手の代わりになって動かしていくところの技術なのです。
自分の背骨で吸う、それは誰にでもできる。自分の手で呼吸する、これも皆やっていますからできる。
他人の手で呼吸する、他人の背骨で呼吸する、ということは難しい。難しいですけれども、それが出来なければ、人の力を強くしたり、人の気を変えたりするわけにはいかない。
愉気ではないんです。気を送り込むのではないんです。病人の呼吸は頼りにならないんです。
人の背骨で自分の呼吸をするのです。あるいは人の頭、とくに眉間で呼吸をします。また、相手の気のつかえているところで呼吸をします。
通らなければ相手は死ぬだけです。通れば生きるんです。
だから普段に人の背骨で気を通すということを練習しておかないと、いざという時に間に合わないのです。
心を静かにしてスッと気を通す。通ると、受ける人は腰まで暖かくなる。少し汗ばんでくるのが普通です。