野口整体を愉しむ(再録47)整体操法の基礎を学ぶⅡ(39)頸部操法における肘と手の使い方

整体操法の基礎を学ぶⅡ(39)頸部操法における肘と手の使い方

今日の講義は、新シリーズに入って第二回目の記録です。講義はかなり以前のことでもあり、いまでもはっきりと思い出すことができるものと、まるで忘れてしまっていて改めて新鮮に感じるものとが混じり合っています。ただ、昔の私も今の私も、唯一変わらないと思えるのは、野口整体法が持つ魅力に惹きつけられ、その思想や技術への興味が少しも減衰しないどころか、ますます愉しみに満ちてきているように感じていることです。「すごいなあ、でも及び難い世界だなあ」と、毎回感じながら、相も変わらず整体の素人としてこのブログに向き合っています。でも、野口整体のどこにそんなに魅力を感じているのかを、いまだにうまく自分の言葉にして言えない。何のために野口整体を学びたいと感じているのかを、自分の言葉として他者に語りかけることが出来ない。
当時一緒に整体を学んだ十指を越える知人たちは、みな整体のプロとして立派にその道を開拓している。私はと言えば、ちょうど大好きなバンドや演奏家のライブに行ったり、家でその音源を再生して楽しんでいる愛好家とか、ファンといった位置から野口整体に接しているとしか言いようがない。だからいつまでたっても、野口晴哉氏の言葉を、あっちからこっちから引っ張り出して羅列することしか出来ないのだと思う。
それは浄土教で言えば、信でも不信でもなく弥陀の光に突き進む真宗親鸞の思想的境涯が好きなのだ、言っていいかも知れない。そういえば野口氏も親鸞が好きであると何処かで書かれていた。そして今月11月号の「月刊全生」の表紙裏には、野口氏のあの独特な手書き文字で、浄土宗の法然について、「法然は私の最も好きなたった一人の日本人」という記載もあります。もちろん私は、整体思想を信じるとか信じないとかを言いたいのではありません。ただ、「善人なをもて往生を遂ぐ、況や悪人をや」と言い、非僧非俗を貫いた親鸞。浄土を求めて、なおこの穢れた現世に深い愛着を捨てきれないと言う彼の思想的態度に、極めて現代的な課題を感じるとともに、親鸞が万巻の仏教経典に意を凝らし、浄土に救いを求める悩める普通の人たちに寄り添いながらも、一人静かに人為と無為の狭間で格闘した先人がいた、ということを重ね合わせたいと思うのです・・。なにやら訳の分からない横道に逸れて行きそうなので、軌道修正して、記録を続けます。

I先生。「今日は肘と手の使い方について説明し、そのあと実際に練習を通して主として型についてやっていきます。ただ、この中等講座での練習は、壊れていないのに壊れていると仮定して行うので、初等の時のようにギュウギュウ力を入れたりすると本当に壊れてしまいます。そうなると自然に壊れた場合と違って、非常に治しにくいので、練習では型だけを憶えて、本物に出会ったときにパッとやって下さい。くれぐれも度を越すことのないように練習には十分注意して行ってください。」

寝違えて頸が曲がらないという時は、頸椎の五番に異常がある。それと同時に四番も動きが悪くなっている。こういう場合には二番、五番を押さえるのですが、その前段としてまず頸椎二番を押さえる。
二番を真横に、吐く息に添って触れる。そして相手が吸ってきた時にちょっと力を加える。この時、捻ってはいけない。
つぎに頸椎五番を触る。これは捻り、押さえてしまってから捻りながら力をずらす。ずらすと相手の肩が上がるから、その肩をこちらの肘で押さえてしまう。肩を押さえると、相手は五番を押さえられている感じがやわらいでくる。そこの力が抜ける。力が抜けた時に、肩を後ろに引くように持ってくると、多くの場合、寝違いの痛みはすぐに治る。
肘で相手の肩を後ろに引くことができると、やり損ないがない。相手は肩に対応した力を出すので、それで治る。相手自身の力で治るわけです。こちらの力だけで、物理的な力だけで治そうとすると相手を壊すことが多い。
これを練習してください。あくまでも仮のものですから、ギュウギュウやらないこと。

五番に故障がある時は、肩を引くと極めて楽になる。引いても硬いままなのは捻れの頸ではない。その場合は頸椎四番を真横から押さえる。これは頸を柔らかくする準備です。これで捻れは柔らかくなる。
四番を押さえる時は、二番を押さえ、それから四番を押さえる。狂っている場合は簡単に体が上がる。狂っていない時には上がらない。狂っていた時は、持ち上げて向きを変えてフッと落とす。頸椎四番に指を当ててボキッとやる。ボキボキと鳴るのは駄目である。難聴の人の場合はそこが鈍っているので、相当強引にやっても大丈夫であるが、普通の人の場合は無理にやってはいけない。
頸椎五番の場合は伏臥でやったほうがやりやすい。五番に指を当ててボキっとやる。
前後の場合は難しい。頸椎二番、あるいは五番に特に影響する。それを治すのに腰椎一番を調節しなくてはいけない。それを治して、胸椎五番から上を調節し、それから頸椎七番の調節に移る。
いわゆるむち打ち症の一番大きい問題は前後である。頸椎の七番、五番だけでなく、胸椎の二番、四番、五番と腰椎の一番が狂っている。直接には頸椎七、五番のくっつきだが、これは頸から治していったのでは治らない。腰椎一番、それから上肢を利用する。肩の関節を弛める。ここが硬くなっていると治らない。肩(上肢第七)の操法をやる。それから肩の下に指を突っ込んで、ここに神経の束があるが、これを弾く。弾く中に硬くなっている処が二本あるが、その硬い方を見つけて愉気をする。愉気の途中で頸を横に向けた時に痛くなる処があるから、そこにも愉気をする。
腰椎一番、胸椎五番、胸椎二番をやり、それから肩、さらに頸に移っていく。下から順に治していく。場合によっては脚の短くなっている方を引っ張っておく必要がある。
体に来たショックが逆に頸に来ていると見るべきで、頸の壊れが体の下へ行くのではない。体の下の方から治していく。そういうつもりで調節すればいい。腰椎一番、胸椎五番、胸椎二番は初等でやったように普通にやればいい。今日の練習で新しくやるのは肩の操法。ゴリっとやって一番硬い処を持って前にやる。これは後日やる肩の脱臼や、四十肩、五十肩を治すのにも応用できる。
最後に頸椎七番の矯正にかかるのだが、これは難しい。六番は簡単であるが、頸椎七番というのはなかなか動かない。腰椎三番に次いで頸椎の七番というのは厄介である。
寝違いで頸に異常が出るのは左右か捻れです。頸が痛いとか曲がらないとかいうのは大抵左右か捻れです。ところが、前後の時は、異常が激しく全身に出る。この前後の異常以外はそれほど心配はない。前後は難しい。
異常というのはみんな椎骨が飛び出す。背骨を見ると、悪い処は全部飛び出している。胸椎五番、二番が揃って飛び出していたり、上がるか下がるか、片側に片寄るかしている異常を見つけたら、気楽に構えないで、しっかり腰を据えて構える必要がある。簡単にはいかない。